エネルギー・素材メーカーの工場における技術系の仕事紹介(一回目 高炉 連続蒸解装置)

工場設備のいろいろ と 技術者の仕事

プラントを持つ大企業に勤める場合、皆さんは、入社までの過程で必ず、工場見学を行います。自分がこれから就職しようと考えている業界で、今後、自分がどんな設備の改善業務にあたるか、具体的な想像をもって就活に望むことは、面接担当者に就職後のギャップがないことを示せるので、皆さんの就職活動を圧倒的に有利にしてくれます。

プラントを持つ大企業に勤める技術者(電気主任技術者も含む)の業務は、保全業務が主と思われがちですが、実際は設備の改善・改造に携わる業務の方が、多いということを皆さんはご存知でしょうか?

今回からは、電気科出身の大学を出られる皆さん、電気主任技術者の資格を武器として、エネルギー・素材メーカー企業に就職を検討している皆さんが、実際、企業(主に鉄鋼会社)で、どのような設備の改善・改造に業務に今後携わるか、具体的な仕事内容について紹介したいと思います。

主に鉄鋼会社としたのは、筆者が鉄鋼会社に勤めているため、より詳しいからです。ですが、その他の業界にも十分に触れたいとは思います。

ただ、筆者の感想では、他の業界の同僚から設備の仕組みと、その業務内容をヒヤリングしてきた結果、製紙・石油・化学(エチレン)・非鉄金属・電力・ガス等の電気主任技術者の活躍しやすい巨大プラント(大きな工場)を持つ会社の全設備は、ほとんど鉄鋼会社の保有する設備の仕組みと、そこでの業務を理解すれば、他の業界の設備も、同様の原理で同様の改善業務を行うため、理解できると感じました。以下に同じ改善業務が想定される設備を横並びにした、各業界の保有設備の一覧表を記します。

鉄鋼会社での業務内容が把握できれば、他の業界も同様の設備で同様の業務が行われていると理解できると思います。

なので、鉄鋼会社の保有する設備を中心に、他の業界の設備にも触れて、そこで行う改善・改造業務を紹介したいと思います。

第一回目は、鉄鋼会社のシンボルともいえる高炉の仕組みと、技術者(企業のプラントエンジニア)の改善業務を紹介したいと思います。他の業界で、よく似ている設備で似た業務を行っている製紙会社も一緒に紹介します。

皆さんは高炉が何の設備かご存知でしょうか?

高炉は鉄鉱石とコークス(石炭)を還元させることで、鉄鉱石を溶かした銑鉄を取り出す装置です。

以下にその仕組みの図を示します。

高炉の操業では、鉄鉱石とコークスの積み重なった層内の隙間をできるだけ維持しながら、隙間に熱風を送ることで、より広範囲の鉄鉱石を溶かす(還元する)ことができます。

しかし、熱風の送れる範囲が不均一になると、一部だけ熱風が過剰に送られて鉄鉱石がとける場所にかたよりが生じます。そうなると、鉄鉱石とコークスの積み重なった層内の隙間が崩れて部分的にふさがり、熱風が届かず鉄鉱石が残ってしまう部分ができます。つまり、生産量が落ちてしまいます。業界では「おなかをこわす」と表現してます(*´ω`*)

 この状況を防止するために、投入口からの投入分布、熱風の量・温度・向きを調整するわけですが、高炉の中の鉄鉱石とコークスの層がどんな状況かは、外壁は透明ではないのでわかりませんし、最初に投入した鉄鉱石が、下まで落ちて溶けて出てくるのに、8~14時間と、どのくらいの時間がかかるのかも分かりません。

プラントエンジニアの業務としては、この高炉の中の層の状態を現在の状態から未来の状態までを予測し、適切に熱風量と投入量を制御できるようにするための業務が主となります。

具体的には、高炉の周辺に多数のセンサを設けたり、送った熱風量の熱量・向き、投入した鉄鉱石・コークスの量やサイズなどを記録し、層の状態を解析するシステムの最適化。投入口可動部・熱風調整ファンの電動機類の設置や制御機構の最適制御化。最近流行の深層学習を駆使した熟練の人の操作をマネできる人工知能の構築などを行います。

似ている機構としは、製紙会社で、木材チップを熱して木材の中の樹脂を除く、連続蒸解装置というものがあります。連続蒸解装置の仕組みを以下に示します。

樹脂を溶かすための液体で満たされた装置の上部から木材チップを投入し、下部に行くほど木材チップは熱せられ、中の樹脂を取り出されていきます。この設備の問題もまた、鉄鋼会社の高炉と同様に内部の状況がわからず、最初に上部から投入した木材チップが、いつ樹脂が完全に取り除かれるのか不明な点です。

木材のチップは上部から連続で送られて、下部から連続的に出てくるわけですが、出口から早く取り出しすぎると、当然、樹脂が十分に抜けないわけです。製紙会社の連続蒸解装置でプラントエンジニアの改善業務は、この効率を最大限に挙げて、木材チップの樹脂をできるだけ早く抜いた状態(パルプ)にすることが仕事になります。

具体的には、装置の配管にセンサを付けて状態を監視するシステム、それを基にした、樹脂を溶かすための液体を送る循環ポンプの回転数制御、装置内の温度制御などの最適化に取り組むことになります。

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