温かい状態のものを冷やす(温度を下げる)と、そこにあった熱は外に放出されたことになります。温度の上げ下げは、熱エネルギーが移動する方向性を示しています。では、温度を下げたとき、どのくらい熱エネルギーが放出するのか?これを示すのが、エントロピーという指標です
この放出した熱エネルギーの量は何によって変わるのか、水の場合を想定してみましょう。
水は1℃下げても、ほとんど外に熱エネルギーを出しませんが、水蒸気になるほど1℃温度を下げたとき、外に放出できる熱エネルギーの量が多くなります。つまり、物質の状態によって、外に放出する熱エネルギーの量は異なります。その時の物質の状態のままで1℃の温度低下をさせたとき、その物質から放出する熱エネルギーの量をエントロピーと呼んでいます。
では、このエントロピーという指標が何のために使われるのか火力発電を例に挙げて紹介します。火力発電では、水を温め(温度を上げて)蒸気を作り、その蒸気を急激に冷やす(温度を下げる)ことで、気圧差を作りタービンの羽を回転(エネルギーを放出)させて電気を起こします。この時、火力発電機は機械で出来ていますので、水を加熱できる温度に設備の限界があります。限られた温度幅で温めた蒸気を冷やし、できる限り蒸気の熱エネルギーを取り出すためには、1℃の変化で多くの熱エネルギーを取り出す必要があります。
以下のように温度とエントロピーを軸に火力発電の水の移動(熱サイクル)をグラフにします。ポンプからボイラまで水を温めるときは、できるだけ熱エネルギーを外に漏らさずに与えたい。つまり、外気との温度差で熱エネルギーが逃げにくい(手放しにくい)水の状態のとき熱エネルギーを多く加えた方が効率よく熱エネルギーを水に蓄えられます。一方、熱エネルギーを手放しやすい蒸気の状態のときに温度をさげた方が、より多くの熱エネルギーを効率よくタービンへ伝えることができます。
このように、火力発電においてエントロピーは、効率よく水にエネルギー与え、水からエネルギーを取り出すために、水の熱エネルギーの手放しやすさの状態(水⇒水蒸気)の指標として使われています。温度とグラフにすることで、エントロピーの小さい状態でどれだけ熱エネルギーを蓄え、エントロピーの大きい状態でどれだけ熱エネルギーを手放せたか、水のエネルギーの受け渡し効率を確認するために使用されています。
参考にした本 発変電工学総論 (電気学会大学講座)
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