ここでは、以下の図で、世界・アメリカ・中国・日本で起こった事象をキーワードで整理し、点と点で繋げることで、2019年から2022年初めにかけての米中関係の変化・コロナ・中国の政策転換が与えた世界経済の大きな変化の流れを説明します。
①市場を独占しようとする中国と技術流出を防ごうとするアメリカとの分断の流れ
【グローバル経済の広がり⇒中国の市場一強体制】
アメリカが利益の拡大を求めて開始したグローバル経済の広がりは、中国にとっては、国策によって大量の資金投入を行うことで自国の企業を発展させるため都合がよいものでした。鉄鋼などの汎用品は、中国の安価な製品が大量に出回り、世界市場では独占状態なってゆきました。
【保護貿易主義の広がり】
世界では、中国を名指しするわけではないものの、安価な品が市場に出回ることで国内企業が衰退することを恐れました。ヨーロッパ諸国をはじめとした各国は、輸入関税を引き上げ、自国内の企業を保護する動き(保護貿易主義)が広がってゆきました。イギリスのEU離脱もその一つです。
【米中貿易摩擦とデカップリング】
アメリカでは、トランプ大統領が就任することで、中国製品の鉄鋼・電子部品等の輸入品の受け入れ拒絶(米中貿易摩擦)がより顕在化。さらには、中国に技術を模倣され国内市場を独占される危険性から、アメリカのサプライチェーンを中国のサプライチェーンから引き離そうという動き(デカップリング)を積極的に実行しようとしました。この動きには、中国からアメリカへの技術者を受け入れるといった人の動きまでも禁止する措置をとっていました。
【中国の自国サプライチェーン強化】
中国は、アメリカの動きに対し、自国内の企業が、製造部品をアメリカから入手できなくなる危険性があったため、自国内のサプライチェーン強化に一層の資金を投じました。特に半導体は製造装置、素材ともに諸外国に依存しているため、国内製造基盤強化を目的に大量の製造装置購入を行いました。(日本では、この動きが東京エレクトロンをはじめとする半導体企業の収益向上に大きく寄与しました。)
【コロナによる半導体不足】
この時、世界では、日本から海外に分散した半導体のサプライチェーンが、コロナによって寸断され、半導体不足になりました。
【アメリカのインフラ投資政策】
アメリカでは、中国の動きと半導体不足を受け、バイデン大統領の就任とともに半導体を含むサプライチェーンの自国内製化を推進するため、200兆円のインフラ法案の可決に踏み切ろうとしています。
【世界での影響】
日本でも、海外に分散した半導体のサプライチェーンがきっかけとなり、その一環として半導体製造拠点(ファウンドリ)を設けるため、熊本に台湾のTSMCの製造拠点が誘致されています。
現状では、この自国内製化の動きは、半導体がより顕著になっていますが、米中間の対立が続く限り、5G、ゲノム解析、EV関連(電池)などのハイテク技術へも広がってゆく可能性が高いと考えられます。
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