エネルギー・素材メーカー企業に就職を検討している電気を学んでいる皆さんが、どのような設備の改善・改造に業務に今後携わるか、今回も鉄鋼会社を先に取り上げ、具体的な仕事内容について紹介したいと思います。第二回目は、鉄鋼会社で成分を調整する装置である真空脱ガス装置についての改善業務を紹介したいと思います。同じ業務が想定される石油会社の減圧蒸留装置についても紹介します。
真空脱ガス装置とは、溶けた金属に溶存した気体を取り除く装置です。金属は内部の不純物(気体元素)が抜かれることで、柔らかく曲げやすくなります。真空脱ガス装置は、その度合いを調整するための装置で、主に鉄鋼、非鉄金属のアルミメーカーで使用されています。
真空機構の原理は蒸気を水に戻す際に体積が急激に下がることを利用していて、蒸気の送る量で真空の程度を調整します。以下にその仕組みの図を示します。
冷却水の流れる容器に送られた蒸気が一気に凝縮することで、体積を急激に縮小させ容器内を一気に減圧させます。その影響で、その後に送られてくる蒸気は真空脱ガス容器内の空気を巻き込んで、さらに勢いよく冷却水の流れる容器に引き込まれます。その結果、真空脱ガス容器内は減圧されて容器の2本のノズルから溶鋼が吸い上げられます。吸い上げられた溶鋼は、真空脱ガス容器の2本ノズルの片方からアルゴンガス(希ガス)を吹き込まれることで、両ノズル内の溶鋼の質量バランスが崩れ、循環します。こうして溶鋼は均一に減圧範囲にさらされ、溶鋼内部の気体元素(水素、窒素など)が抜かれてゆきます。
真空脱ガス容器内の減圧度合いは装置に送られる蒸気量を電動バルブで制御することで調整されます。使用する蒸気はLNGの燃焼で発生させていますのでコストに影響します。アルゴンガスもまた発生させるために電力コストがかかります。
プラントエンジニアの業務としては、この減圧を安定に調整できるようにコントロールバルブを最適制御化する仕事があります。減圧の真空度はアルゴンガスの使用量の変化、溶鋼内の気体元素量変化、冷却水温度変化によって変動します。より正確に変動のない真空度で制御することで、コストの削減、製品素材の向上につながってゆきます。
同じ業務が想定される石油会社の減圧蒸留装置についても紹介します。減圧蒸留装置は、原油から圧力を下げて特定の石油成分を取り出す過程で使用されます。
以下にその仕組みの図を示します。
先に説明した真空脱ガス装置と同様に、減圧機構の原理は蒸発した原油分の凝縮による体積縮小を利用しています。凝縮による減圧量の調整は、冷却水量をポンプで制御することで行われます。ここでのプラントエンジニアの業務もまた、ポンプ動力コストの削減、製品素材の向上を目的とした制御の構築となります。
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