CTの二次側を開放状態にすると鉄心内で磁気飽和を引き起こし、鉄心内部の急激な磁束変化により二次側の巻線に高電圧が発生します。ここでは、高電圧が発生してしまうまでの物理現象のメカニズムと、発生する高電圧の大きさは機器のどんな特性によって決まってくるのかを説明します。
CT(計器用変流器)は、以下のように、穴のある鉄心に巻線導体が施されたもので、ケーブルを鉄心の穴に通して、ケーブルの電流を小さな電流として、測定用に取り出すために使用されるものです。
通常の場合、CTの鉄心内部の磁束は、次のアニメ―ショーンのようになります。
ケーブルに流れる電流の向きに対し右周りの方向に作り出そうとする磁束Φoを、巻線導体側で逆起電力V2と電流I2が発生し、打ち消そうとする向きの磁束Φ2を作り出そうとする作用が働くため、ケーブルに流れる電流が作り出す磁束Φoは限られた大きさとなります。
巻線導体側を開放状態にした場合、巻線導体側に電流は流れないため、打ち消そうとする向きの磁束Φ2を作り出そうとする作用が働かなくなります。
その結果、ケーブルに流れる電流の向きに対し右周りの磁束Φoが鉄心の収まる限界まで磁束を作り出すこととなります。(磁気飽和)
開放時のように鉄心内部が磁気飽和の状態となると、鉄心内部の磁束の向きが変わるとき、磁束の変化量が大きくなります。それにより、磁束の変化量の大きさに比例する巻線導体側の電圧V2が高くなってしまいます。
開放時の電圧V2は、「導体巻数N2」と「磁束Φoの変化量の大きさ」で決まります。
磁束の変化量は、鉄心内の磁束の最大値が大きいほど大きくなるため、磁束が大きくなる要因である透磁率・鉄心断面が大きい(鉄心が大型なもの)ほど「磁束の変化量の大きさ」は大きくなります。
これらを踏まえると、
計器用変流器(CT)は、導体巻線が多く、鉄心が大型なもの、つまり、一般的には変換精度が高くて高価なものほど、開放時に大きな電圧が生じやすいということです。
補足
変圧器の二次側を開放しても、高電圧が発生しないのは、CTとは違い、一次巻線が多いためです。自己リアクタンスによる逆起電力・電流成分により、一次側に流れる電流で発生する磁束を打消すような磁束を発生させようとする作用が働くためです。
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